デリー高等裁判所は、2024年7月4日に請願:Saurav Chaudhary v. Union of India & Anr. (2024:DHC:4946)に対する判断を下し、放棄されたとみなされた特許を復活させました。
これはインド知的財産法史上初めての出来事ですが、同時に、この決定において、デリー高等裁判所は、特許・商標代理人の行動規範の草案を作成することを、インド特許意匠商標総局に命じました。
特許・商標代理人の行動規範作成の経緯は以下の通りです。
申立人(S&I注:以下、「出願人」と表記します。)はインドの法律事務所を通じて2019年に特許を出願しましたが、出願人からの再三の連絡にもかかわらず、法律事務所は出願人に対して出願状況を通知せず、特許出願は最初のオフィスアクション(FER)に対する応答期間内に応答しなかったとして、出願の放棄とみなされ、最終的に拒絶されました。
その後、出願人はデリー高等裁判所に請願を提出しました。この請願に対して、デリー高等裁判所は、出願の放棄が出願人の代理人の不作為または過失に起因する場合、デリー高等裁判所は書面提出の遅延を容認する権限を行使できるとの判断を下しました。
請願の審理において、インド特許意匠商標総局は、FERはインターネットを通じ、インド特許意匠商標総局のサイト上で入手可能であり、出願人はそれを確認するべきだった、と主張しましたが、デリー高等裁判所は、ウェブサイトにアクセスできることを有効かつ十分な抗弁とみなすことはできないとしました。
デリー高等裁判所はまた、出願人の特許代理人には故意による過失があったと判断し、インド特許意匠商標総局総局長に対し、過失のあった特許代理人に対する調査を行うよう指示しました。
さらに、デリー高等裁判所は、特許法(1970年)および商標法(1999年)の現在の枠組みには、特許代理人および商標代理人の行動規範が規定されていないことに言及し、代理人の行動を規制する米国法および英国法の対応規定に触れた上で、インドの特定の特許代理人と商標代理人が採用している、誤解を招くような宣伝行為に対しても、出願人の利益にならない点を指摘しました。
そして、デリー高等裁判所はインド特許意匠商標総局に対し、特許・商標代理人を規制するための行動規範を、利害関係者協議を実施した上で、2024年12月31日までに最終決定するよう指示しました。
(参考)
弊所提携インド事務所Remfry&Sagarによる本件に関する発表
https://docs.remfry.com/2024/Code_Of_Conduct.pdf
担当 鈴木秀幹(S&I Japan)