インド特許意匠商標総局は、2024年8月26日に特許の商業的実施の程度についての報告(以下、「特許の商業的実施報告」)に関するFAQを発行しました。
インドにおいて、特許権者又はライセンシーは、その保有する特許に関し、特許の商業的実施報告を行う必要があります(インド特許法第146条)。
この、特許の商業的実施報告の手順は、インド特許規則131において定められ、Form 27という実施報告書の書式により提出を行います。
弊所既報の通り、2024年3月15日に改正特許規則(2024年改正特許規則)が施行され、特許の商業的実施報告の手順についても改正が行われた結果、実施報告書(Form 27)の提出は、特許が付与された直後の会計年度から開始し、3会計年度ごとに1回提出しなければならず、また、3年間の各期間の終了後6ヶ月以内に提出しなければならないと改められました。
しかしながら、この特許規則改正において、特許の商業的実施報告の部分についての解釈が曖昧であったため、インド特許意匠商標総局は、利害関係者を集めて協議の上、2024年8月26日に特許の商業的実施報告に関するFAQを発行いたしました。
このFAQでは、実施報告書(Form 27)の提出に関して、以下の点が明確にされています。
- 2023年3月31日までに付与された特許(有効な特許)
2023年3月31日までに付与された特許(有効な特許)については、過去実施報告書(Form 27)を適切に提出している場合、今後は、
・2023-2024年度(2023年4月1日~2024年3月31日)
・2024-2025年度(2024年4月1日~2025年3月31日)
・2025-2026年度(2025年4月1日~2026年3月31日)
の3会計年度内に実施された商業的実施について、2026年4月1日〜2026年9月30日の間に実施報告書(Form 27)を提出する必要があります。
- 2023-2024年度に付与された特許(有効な特許)
2023-2024年度(2023年4月1日~2024年3月31日)に付与された特許(有効な特許)については、
・2024-2025年度(2024年4月1日~2025年3月31日)
・2025-2026年度(2025年4月1日~2026年3月31日)
・2026-2027年度(2026年4月1日~2027年3月31日)
の3会計年度内に実施された商業的実施について、2027年4月1日〜2027年9月30日の間に実施報告書(Form 27)を提出する必要があります。
- 2024-2025年度に付与された特許(有効な特許)
2024-2025年度(2024年4月1日~2025年3月31日)に付与された特許(有効な特許)については、
・2025-2026年度(2025年4月1日~2026年3月31日)
・2026-2027年度(2026年4月1日~2027年3月31日)
・2027-2028年度(2027年4月1日~2028年3月31日)
の3会計年度内に実施された商業的実施について、2028年4月1日〜2028年9月30日の間に実施報告書(Form 27)を提出する必要があります。
- 2023-2024年度中に消滅した特許
2023-2024年度(2023年4月1日~2024年3月31日)中に消滅した特許(無効となった特許)については、
・2023-2024年度(2024年4月1日~2025年3月31日)
の会計年度内に実施された商業的実施について、2024年9月30日までに実施報告書(Form 27)を提出する必要があります。
- 2024-2025年度年度中に消滅した特許
2024-2025年度(2024年4月1日~2025年3月31日)以降に消滅した特許については、3会計年度の経過を待つことなく、消滅までの期間について、
・2023-2024年度(2024年4月1日~2025年3月31日)
・2024-2025年度(2024年4月1日~2025年3月31日)
の2会計年度内に実施された商業的実施について、2025年4月1日〜2025年9月30日の間に実施報告書(Form 27)を提出する必要があります。
- 実施報告書(Form 27)の提出期間の延長
規則131(2)に基づき、政府費用を添えて、指定の様式(Form 4)を用いて事前に延期申請を提出することにより、Form 27の最大3か月までの提出期間延長が認められ、さらに、規則138に基づき、政府費用を添えて延期申請を提出することにより、Form 27の最大6か月までの提出期間延長が認められます。
たとえば、2024年9月30日までに実施報告書(Form 27)を提出しなければならない特許については、規則131(2)に基づきForm 4を提出することで2024年12月31日まで提出期限が延長され、さらに、規則138に基づく延期申請の提出により、2025年6月30日まで提出期限が延長されます。
- 実施報告書(Form 27)の提出義務
実施報告書(Form 27)の提出は義務であり、期限までに提出を行っていない場合、インド特許法第122条に記載された罰則が課されることがあります。
また、過去に実施報告書(Form 27)を期限内に提出していない特許については、過去の未提出の実施報告書(Form 27)と、新たな実施報告書(Form 27)をまとめて提出することはできない、とされています。
(参考)
インド特許意匠商標総局による、本件に対するFAQ
(FREQUENTLY ASKED QUESTIONS (FAQs) ON FORM 27)
https://www.ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/News/1001_1_Final_FAQs_Form-27_26thAugust2024.pdf
担当 鈴木秀幹(S&I Japan)